【金属アレルギーが起こる仕組み】OK素材とNG素材は?おすすめピアス紹介と選び方のコツを解説!
なぜ金属アレルギーは起こるの?
アレルギーは、身体の過剰な免疫反応によって起こります。免疫反応は、本来はウィルスなどから身を守るための大切なシステム。
しかし、本来は無害な異物に対しても免疫が過剰に反応して攻撃した結果、かゆみや発疹が引き起こされるというのが、アレルギーの仕組みです。
金属アレルギーはこのアレルギー反応の中で、Ⅳ型アレルギーに分類されます。
原因になる金属は多数あり、直接金属に触れた部分に異常が出る場合は分かりやすいですが、手先や脇下など、別の場所に症状が出る場合もあるので注意が必要です。
局所性金属アレルギーと全身性金属アレルギー
触れたところが赤くなったり、かぶれたりすることを「局所性金属アレルギー」といい、金属が直接触れていないところに出る症状を「全身性金属アレルギー」といいます。
金属が触れた所に異変が起こる局所性金属アレルギーは、原因金属の特定が比較的簡単です。
異変に気づきやすいため、予防もしやすいタイプのアレルギーと言えます。
しかし、金属から離れた所に異変が起こる全身性金属アレルギーは、そもそも金属アレルギーであるとの診断が難しく、原因不明のまま症状に悩まされることも。
今金属アレルギーがなくても早いうちから素材を選ぶのがおすすめ
早いうちからピアスを着けている人は、金属アレルギーを発症しやすいとも言われていますので、ピアスはアレルギーになりにくい素材を選ぶのが吉。
今回は、金属アレルギーの人が避けたほうがいい素材や、アレルギーが出にくいおすすめのピアスをご紹介します。
とはいえ体質は個人差が大きいもの。ご紹介する素材のピアスでも、既にアレルギーのある金属に対しては発症する場合があるでしょう。
しかし、アレルギーが出やすい金属を避けることで感作(身体が金属をアレルゲンと認識すること)の確率を下げられるため、新たにアレルギーを発症してしまう確率は下げられます。
金属アレルギーの人が避けた方がいい素材
学生時代、化学の授業で元素記号が並んだ周期表を見たのを覚えていますか?「水平リーベ」と唱えた記憶がある人もいるでしょう。
金属アレルギーを引き起こしやすい金属は、周期表の真ん中あたりに集中しています。
金属アレルギーを起こしやすい金属は、イオン化しやすい金属です。イオン化の説明は割愛しますが、ここでは、イオン化しやすい=汗や水分に溶けだしやすいと考えてください。
アレルギーを引き起こしやすいと言われる金属は、確率が高い→低いと言われている順に
- ニッケル
- コバルト
- スズ
- 水銀
- クロム
- パラジウム
- 亜鉛
- 銅
- プラチナ
- 銀
- 金
- チタン
となっています。
アクセサリーの素材として知られる金や銀、プラチナなどの貴金属は順序の下の方にあるから安心かというと、必ずしもそうとは限りません。
一般的に金属は、強度や加工性を上げるために複数の金属を混ぜて使われており、複数の金属を合せることを「合金」、混ぜる金属のことを「割金」といいます。
貴金属であっても多くは合金されており、割金に何を使っているのかは表記されていない場合もあります。
素材の表記がない安価なアクセサリーについては、アレルギーを引き起こす可能性のある金属が合金されているケースもあるため、とくに注意が必要です。
金属アレルギーでとくに注意したい素材
アクセサリーに使われる金属でとくに注意したいのは、
- ニッケル
- コバルト
- スズ
- クロム
- パラジウム
ニッケル
ニッケルは最も身近な金属で、そのためアレルギーの原因にもなりやすく、警戒が必要な金属。
50円玉や100円玉に使われているほか、コーヒー、紅茶、チョコレートなど、よく口にする食品にも含まれています。
後述するクロムと性質が似ているので、ニッケルアレルギーになるとクロムアレルギーになる確率も高くなります。
コバルト
コバルトは工具などに使われるケースが多いですが、タングステン製の指輪などにも含まれているので、すでにアレルギーを持っている人は注意が必要です。
スズ
スズは食器などに多く、メッキの材料としても使われます。
スズは、ピューターという素材として工芸品や装飾品に使われていますので、スズという名称が出ていない場合でも確認が必要です。
アンティークやビンテージのジュエリーなどで見られるので、古いジュエリーが好きな人は注意してください。
クロム
クロムは、メッキの他、なめし皮に使われるため、レザー製品を身に着ける際に注意しましょう。
パラジウム
パラジウムは主に歯科治療のための金属として使われる金属ですが、金や銀の割金としても使われます。
パラジウムにアレルギーを発症した人は、ニッケルでもアレルギーを発症しやすいため、注意が必要な素材といえるでしょう。
金属アレルギーにおすすめのピアスの素材と選ぶコツ
すでに金属アレルギーのある人におすすめの素材は、感作している金属によって変わります。
そのため一概には言えませんが、ニッケルの含まれない素材ですと純チタン・24K・ガラス製・樹脂製のピアスがあります。
ただし、金属アレルギーの人は複数の金属に感作している可能性がありますし、ニッケル以外の金属や樹脂にアレルギーがある場合は上記のピアスでもアレルギーが出る可能性はあるでしょう。
選ぶコツとしては、まずは自分が何の金属に反応しているのかを知ること。
そして、どのようなものに該当金属が含まれているのかを知るのが大切です。
現在はアレルギーを発症していないという人は、なるべく感作しにくい素材でできたピアスを身に着けましょう。
下記におすすめのピアスをご紹介します。
金属アレルギー対応商品一覧を見る ≫ステンレス(サージカルステンレス)
ステンレスの規格は60種類以上あり、それぞれ特徴が違いますが、鉄にクロム、もしくは鉄に主にクロムとニッケルを合金した鋼の一種がステンレスです。
アクセサリーに使用されるステンレスは、オーステナイト系と呼ばれるステンレスがほとんどで、主にクロムとニッケルを合金しています。
クロムとニッケルはどちらも金属アレルギーを発症しやすい金属ですが、鉄に添加すると鉄の表面に酸化被膜を作ります。
酸化被膜とは、酸化物(サビ)の一種で、酸化被膜があると、金属は溶けだしにくく(イオン化しにくく)なります。
ステンレスは、クロムによって酸化被膜を作り出し、ニッケルによって酸化被膜と鉄の密着性を高めているのです。
また、剝がれることのあるメッキと異なり、表面に傷がついても含有するクロムが即座に空気と反応して酸化被膜を作り出すため、よりアレルギーを引き起こしにくいです。
サージカルステンレスとは、ステンレスの中でも手術用ワイヤーなどの医療器具に使われている種類のことで、クロムとニッケルの他にモリブデンという金属を合金し、より腐食に強くなっています。
ただし、サージカルステンレスという呼称について明確な規定はありませんので、実際のステンレスの規格を確認するのが重要です。
一般的にサージカルステンレスと言われているものは、「SUS316」や「SUS316L」という規格が使われますので、規格を明記している商品を選ぶとより安心でしょう。
耐食性はSUS316などのほうが高いですが、注射針やメスなどの医療器具は、より安価で加工性に優れたSUS304が使われることが多いようです。
こちらはサージカルステンレスにK18メッキが施されたピアスです。
現在アレルギーがない人は、なるべくアレルギーが出にくい商品を選び、感作の確率を下げましょう。
すべての人にアレルギーが出ないわけではありませんが、上記のようにメッキも下地もアレルギーに配慮された商品から試してみるのをおすすめします。
ステンレス・サージカルステンレス商品一覧を見る ≫チタン
チタンは比較的新しい金属で、1795年に発見されたのち、実用化されたのは1940年代です。
アレルギーを起こしやすい重金属ではなく、軽金属に分類されます。
人口骨やインプラントにも使われるように、軽くて丈夫なうえ、硝酸や海水などに対しても耐食性に優れています。
鉄の2倍の強度があり軽いため、ピアスの金具に使われることの多い素材ですが、溶接などの加工が難しいという弱点もあります。
また、純チタンについてはアレルギーを発症しにくいものの、チタン合金はニッケルが含まれているものもあります。
チタン合金はニッケルアレルギーを発症する可能性がありますので、注意してくださいね。
こちらはチタンにメッキが施されたタイプ。
メッキの金属に反応する可能性はありますが、メッキに反応しなければ、下地のチタンからアレルギーを起こす可能性は低いでしょう。
シルバー925(スターリングシルバー)
カジュアルなアクセサリーで目にする機会の多いシルバー。
シルバー自体はアレルギーを起こしにくく、おすすめの素材ですが、合金されている割金によってはアレルギーを発症する可能性があります。
シルバーに合金される金属としては、銅、亜鉛などがあります。
有名なシルバー925とは、千分率でシルバーが925‰(=92.5%)、残り75‰(=7.5%)は他の金属が混ざっていますよという意味です。
合金について詳細が書かれている商品は少ないものの、スターリングシルバーと表記されているシルバーについては、シルバー925の中でも割金に銅を使用しているものだけ。
そのため、スターリングシルバーは混ざりものの種類が明確という点においては安心です。
上のネックレスはスターリングシルバーなので、銀が92.5%、銅が7.5%の合金です。
銀と銅にアレルギーがなければ、このピアスでアレルギーは起こりません。
逆にこのピアスを着けて症状が出たなら、どちらかの金属に反応していると分かるので、病院でも対処しやすくなります。ただし少数ながら、ロジウムコーティングに反応しないとは言い切れませんので、注意してください。
こちらはS925に18Kメッキが施されたピアスです。
微量のニッケルを含んでいる可能性はあるものの、どちらも金属アレルギーを起こしにくい組み合わせのため、現在アレルギーを発症していない人にはおすすめ。
汗などでメッキが剥げないよう、こまめにお手入れすると、より発症しにくくなりますよ。
純金(24kゴールド)
金はアレルギーを起こしにくい素材です。とくに純金(24Kゴールド)は安定した金属で、半永久的に錆びないとも言われています。
実は、日本接触皮膚炎研究班JSA調査 において、金はニッケルやクロム、コバルトとともに感作が多い金属です。
(参考リンク:https://www.jscia.org/docs/useful_info/JSA_ResearchData.pdf)
これは、試薬に金チオ硫酸ナトリウムという、皮膚から吸収しやすい状態の金を使っているためで、実際に金のアレルギーを発症する人の数ではありません。
つまり、金は感作しやすい金属であるものの、その安定性から体内に吸収されにくいためにアレルギーを起しにくいと考えられます。
したがって、純金はアクセサリー程度の接触で問題になることは少なく、体内に埋め込むような医療器具については少し注意が必要な金属と言えるでしょう。
現在アレルギーがない人はもちろん、ニッケルなどの金属にアレルギーがある人にもおすすめできる数少ない素材です。
以上のように純金はアレルギーが出にくくおすすめですが、お試しで購入するには高価になってしまうのが残念なポイント。
そこで次に検討するのが、K18・K14・K10などの素材です。
18K・14K・10K
純金は前述の通りイオンになりにくく、安定した金属のため、アレルギーを起こしにくい素材です。ただし、18K、14K、10Kについては割金に注意が必要。
24Kとは純金の表記で、商品の100%が金でできています。
18K・14K・10Kとは、それぞれ 18K:製品の18/24が金(75%が金) 14K:製品の14/24が金(58%が金) 10K:製品の10/24が金(42%が金) という意味です。
金の含有率が下がるほど合金される金属が増えるため、純金に近いほうがアレルギーを起こしにくくなります。
金の合金としては、
- 銀
- 銅
- ニッケル
- 亜鉛
- パラジウム
などがあり、上記の金属にアレルギーを持っている場合は、金製品であってもアレルギーが起きる可能性があります。
イエロー系のゴールドは、比較的アレルギーになりにくい金属が割金に使われるため、不安な人はK18など高品位のイエローゴールドから試してはどうでしょうか。
ただし、全くアレルギーが出ないわけではありませんので、もしも異常があれば着用を中止して医師に相談してくださいね。
また、純金よりは安いといっても、K18のピアスもお財布に優しいとは言えません。
そこでおすすめしたいのが、GF(ゴールドフィルド)のピアスです。
GP、GFは金メッキのこと
アクセサリー販売サイトでよく目にする「GP=ゴールドプレート」や、「GF=ゴールドフィルド」は、下地の金属の表面に金をメッキしたものです。
GFはGPの約100倍厚いメッキが施されています。
GFはメッキの工法もGPと違い、熱や圧力をくわえて合金化させるため、より剥がれにくいです。
そのためGFは、アレルギーを起こしにくい素材といえるでしょう。
ただし、メッキされた金の純度によっては、メッキが剥がれていなくてもアレルギーを起こす可能性がありますので注意してください。
こちらは14KGFのピアスです。アレルギーの心配が少なく、皮膚に接触する面積も最小限ですみます。
アレルギーを発症する確率を下げたいけれど、あまりお金をかけたくないという人は、GFのピアスを試してみてください。
汗をかくときは外し、着けたあとは皮脂汚れを落として保管しておくと、より安心ですよ。
こちらはGP(ゴールドプレート)のピアス。一般的な金メッキといえばGPを指すことが多いです。
K14メッキですので、K10メッキやそれ以下の純度のものよりアレルギーが出にくいですが、GF(ゴールドフィルド)ほどメッキは厚くありません。
下地がシルバーなのは安心材料ですので、メッキの指輪などを着けていて平気な人は試してみてください。
ただし、GP、GFのピアスであっても装着部分に傷がある場合や、ピアッシング後皮膚が再生されるまでのファーストピアスに使用するのは避けるのが無難です。
現在アレルギーがない人も、ピアスホールが安定してから身に着けるようにしてくださいね。
樹脂
樹脂製品は「金属」アレルギーは起こりませんが、樹脂にアレルギーを持つ人もいますので、すべての人に安全な素材とは言い切れません。
レジンなどにアレルギーがある場合は、樹脂製品でもアレルギーを発症する可能性はあります。
また、金属ピアスよりも太いポストが、ピアスホールに負担をかけてしまうなど別の問題が出るケースも。
雑菌が繁殖しやすい点や耐久性の観点からも、自分に合う金属を探してみて、どうしても無理な場合に検討してみましょう。
ガラス
ガラスはアレルギーを起こす心配はありませんが、金属よりも破損しやすいため、とくに顔回りで着用するピアスでは心配です。
運動するときは外すなどして対応できますが、まずは金やステンレス、チタンのピアスを試してみてはいかがでしょうか?
アレルギーが出なくとも、破損したガラスが目に入るなど、重大な事故に遭ってしまっては元も子もありません。
また、ガラス製のピアスであっても、キャッチの部分には金属や樹脂が使われている場合があります。
ニッケルフリー
ニッケルにアレルギーがある人はニッケルフリーのピアスなら安心か?というと、そうでもありません。
ニッケルフリー製品について日本には明確な規定がなく、多くは微量のニッケルを含んでいますので、敏感な人はアレルギーを起こす可能性があります。
一般社団法人金属アレルギー協会が、EUのニッケル規格に準拠した製品についてニッケルフリー認証マークを付与していますが、その規格とは、「人工汗に試験品を1 週間浸漬したときに溶出する、ニッケルの量が0.5μg/cm2/week 以下」というもの。
この基準を満たせば、ニッケルが含まれていてもニッケルフリー認証マークを表示できます。
また、上記の規格に当てはまらなくても、ニッケルフリーと表記するのは可能ですので、ニッケルフリーだからといって完全に安心できないのが現状です。
とくにピアスは金属に感作しやすい条件が揃っていますので、すでにニッケルアレルギーがある場合は避けましょう。
ただし、ニッケルについて全く考慮されていないものではありませんので、傷があったり、皮膚再生前の使用は避け、様子を見ながらつけてみてください。
まとめ
金属アレルギーの起こる仕組みや、ピアスを選ぶ際のポイントをお伝えしました。
金属アレルギーの症状の出方は大きく2種類あって、とくに注意が必要なのは金属が血液に乗って全身に運ばれ、思いもよらぬところに症状が出る全身性金属アレルギー。
最も感作の可能性が高いのがニッケルです。
おすすめは、チタン・サージカルステンレス・純度の高い金・S925など、金属が溶けだしにくい素材のピアスです。
金属アレルギーについては、アレルギー疾患基本対策法という法律の中に「金属アレルギー」の文言が含まれておらず、治療においても明確なガイドラインがありません。
まずは発症しないこと、発症してしまった場合には、原因金属を特定することが大切ですので、素材の分かるピアスを身に着けるようにしてくださいね。